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zoom RSS 【熊の敷石 堀江敏幸】を読む

<<   作成日時 : 2017/06/30 15:33   >>

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【熊の敷石】 2001年 芥川賞
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ずっと読みたかった作品でした。薄い文庫本は何年も棚にあったままでした。
題名の「熊の敷石」とはフランスのことわざなのですが、私達(わたしは)堀江敏幸の創作かと思うほどに
今までは聞いたことはありませんでした。

le pavé de l'ours 余計なおせっかい。ラ・フォンテーヌの寓話より
孤独な熊が、庭仕事好きな老人と仲良くなり一緒に暮らすことになります。
老人が昼寝中に蠅を追い払ってやるのが熊の日課。ある日老人の鼻先に止まった蠅を
どうしても追い払えず、敷石を一つつかんで思い切り投げつけ、蠅ばかりか老人の
頭をかち割って即死させてしまいます。
無知な友人ほど危険なものはない。賢い敵の方がずっとまし


堀江敏幸氏と思しき私はフランス留学経験のあるフランスに久しぶりに訪れ、旧友のヤンと逢います。
ヤンは暫くすると出かけてしまうので、自分の家に来てくれと言われ、パリから2時間列車に乗り
ヤンが借りて住んでいる家に行きます。
私は当時「生活に必要なありとあらゆる事務手続きに失敗し、少しでも不利な状況に陥るような事態は
徹底して避けようと敏感になっていたのです」

ヤンと「私」の関係を、「ながくつきあっている連中と共有しているのは、社会的な地位や利害関係とは縁のない、ちょうど宮沢賢治のホモイが取り逃がした貝の火みたいな、それじたい触れることのできない距離を要請するかすかな炎みたいなもので、国籍や年齢や性別には収まらないそうした理解の火はふいに現われ、持続するときは持続し、消えるときは消える。不幸にして消えたあとも、しばらくはそのぬくもりが残る」と。

ヤンはこの村に落ち着く決定的な要因はモン・サン・ミシェルがあると打ち明けます。読みかけのリトレの伝記の幼年時代の章に、父親の故郷について書いてある個所をヤンに見せます。「父はアヴランシュで生まれた。岬の上にぽつんと止まった小さな町で、正面にモン・サン・ミシェルの僧院と、ひと気のない砂州が見える。挑発するように海に投げ入れられた、この時代がかった賞嘆すべき花崗岩の建物の効果はじつに堂々たるものだ」という個所です。今ではフランスの誰でも訪れる観光地ですが、満ち潮になると潮が僧院のまわりを取り囲み、陸地との連絡路は断たれて、海に屹立する奇岩城の趣を呈します。「よし、間に合うかもしれない。うまくすれば秘密の場所に案内できるよ」とヤンは言い、「私」を乗せて車を走らせます。連れて行かれた秘密の場所、そこは海面から3、40メートルほどもある切り立った崖の先端で、モン・サン・ミシェルはその崖の真っ正面に浮かび上がっていました。「150年前にエミール・リトレが書いた文章そのままの眺めが、いま私の眼前に広がっているのだった」。

「私」はヤンに対してこの私はラ・フォンテーヌの熊みたいなものだったのではないかということに気が付きます。
つまり、フランスのユダヤ人問題など、話す必要のないことを「なんとなく」相手に話させて、傷をさらけ出されるような輩は、冷淡な他人よりも危険な存在なのではなかろうかと、自問します。「潮の引いたモン・サン・ミシェル湾さながら、ふだんは見えない遠浅の海でどこまでも歩いていけるような錯覚の内に結ばれ」てはいるが、「実際には、互い互いの見えない蠅を叩きあっているのではないか。投げるべきものを取りちがえているのではないか」と、「私」は思い至ります。

文庫で114頁ほどでしかない短編ですが、サラサラとよみ進めない難しさがあります。
それは「私」がフランスへ言って、純粋なフランス人ではないヤンと両目が見えない子供を抱えている
ヤンの大家の暮らし、フランスの状況、様子等々が一言一句たりとも一々立ち止り、考えてしまう。

芥川賞の選考委員の評言を見ると(めったに評言など読まないのですが)
三浦哲郎
「隙のない堅固な文章が印象的であった。」「けれども、欠点のない、どこからも文句のつけようのない立派な散文でも、それが必ずしもそのままよい小説の文章になるとは限らないのだから、厄介である。」「この作品はあまりにもエッセー風で小説としての魅力に乏しかった。」
宮本輝
「私は積極的には推せなかった。」「作品の主題なのかどうなのか、熊の敷石なるものも、私には別段どうといったことのないただのエスプリにすぎないのではないかという感想しか持てなかった。」
池澤夏樹
「言ってみれば破綻だらけだ。エッセーから小説になりきっていない。細部がゆるい。タイトルに魅力がない。」「しかし、内奥にはなかなか凄いものがある。ヨーロッパ人の思考法の精髄をさりげなく取り出して並べる手つきがいい。軽い展開の中に重い原石が散りばめられている。」「こういうものをありがたがるのは日本人のヨーロッパ・コンプレックスだという意見があったがそれは逆。もうヨーロッパに学ぶものはないと言い張る心理がヨーロッパ・コンプレックスである。」

納められている二編「砂売りが通る「城跡にて」は読んでいる時にはマーカー付けたり、付箋を付けたりして
いたのですが、読み終えるや二日も経つと全て内容を忘れてしまうほど・・・
これは単に、私の記憶力が愕然と衰えているに過ぎないのですが・・・
「フランス語で眠くなることを《砂売りが通った》と言う」これも何故なのか?
忘れてしまいました(ーー;)
「熊の敷石」は出てくる景色が素晴らしいので、フランスを舞台に映画、映像化されたら観てみたい!

なずな」の方が、私は好きです!


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