【杳子】

杳子.JPG
通常、人は亡くなることで、次第に忘れられてしまう。
だが、作家や芸術家は、亡くなったことで、今更にして
思い出す。故人の死を悼み、どうして、わたしは故人を深く
知ろうとしなかったのかと、途方に暮れ、哀しみの底に
落ち込んでしまう。そうした時に、わたしを故人へと
誘ってくれる助け人がいる。ありがたいことだと感謝する。
今年2月28日に82歳で亡くなった「古井由吉」さん。
 2月18日に82歳で亡くなった古井由吉(よしきち)さんは、作家がこぞって敬愛する純文学のレジェンドだった。往復書簡の共著があり、親交のあった詩人で作家の松浦寿輝(ひさき)さんは寄稿で、「途方もない文章の書き手だった」と悼む。「物語ともエッセイとも散文詩ともつかない前代未聞の『言葉の芸術』」「『反小説』の試み」という古井文学の神髄とは。<朝日DIGITAL>
最近、徐々に遡って佐伯一麦さんの本を自身に取り込んでいる。
佐伯さんをはじめ、古井さんを尊敬してやまない作家は多い。
20代の頃に、古井さんの著書は少なくとも「杳子・妻隠」は
既読だったと思うのだが、次から次と読みたい作家が出てきて
次第に古井さんの余りにも深く、難解な文章とその世界に
付いていけなかった。
「杳子・妻隠」を読む。
杳子は神経を病む女子大生で、或る時登山途中で谷底で蹲って
いるところを同じく大学生の「彼」は谷底へ下りたって
杳子を助け出す。次第に若い男女らしい付き合いが始まる。
杳子の「神経を病む病気」に対峙すればしていくほどに
彼は自身も病んでいるのではないのかと自分に問う。
<杳子は深い谷底に一人で坐っていた。>
この文章を導入部として、最初のK岳、O沢、N沢の
自然描写が谷底の中心に居る杳子の描写と共に
圧倒され、引きずり込まれてしまう。
杳子はどうなるのか?ずっと引きずっていた問いに
明日、病院に行きます。入院しなくても済みそう。
そのつもりになれば、健康になるなんて簡単なことよ。
でも、薬を呑ませられるのは口惜しいわ・・・・・
そう嘆いて、杳子は赤い光の中へ目を凝らした。
赤みを増した秋の陽が痩せ細った樹の上へ沈もうと
しているところだった。略
「ああ、美しい。今があたしの頂点みたい」
杳子が細く澄んだ声でつぶやいた。
彼の手助けを得ずとも杳子は自らの意志で病気に
立ち向かう終わり方に読者としては安堵する。
「内向の世代」と称せられた所以がこれらの描写に
彩られている。些細な杳子の立居振舞を現すにも
膝、腰、まなざしといった詳細部の表現を駆使する。
「妻隠」は「杳子」と作中ではSとのその後の二人の
同棲とも夫婦ともどっち付かずの生活を描いている。
作品としては「杳子」に断然惹かれる。
佐伯一麦から古井由吉と、遅れてきた読者となった。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
2020年11月25日は没後50年を迎えた日。
その人とは「三島由紀夫」
古井由吉とは全く異なった観点から、三島由紀夫は
私の周辺でザワザワしている。
文学作品という道を辿って三島という大作家の
奥深い道を辿りたい。
カルチャーラジオ NHKラジオアーカイブス
▽声でつづる昭和人物史~三島由紀夫
では生の三島の声を聴くことが出来る。
平野啓一郎さんのエージェントから再新の平野さんの
情報がメールで届く。彼は現在発売中の「新潮12月号」
短期集中連載「豊饒の海」論を書いている。
わたしはまだ未読だが、三島作品は「午後の曳航」や
「金閣寺」など読みたい。
29日放送「Panasonic Melodious Library」では
「午後の曳航」を取り上げる。
「井の中の蛙」のわたしは、時々上を見上げて
手の届きそうな「お知らせ」を受け取る。
何が下がってくるか楽しみなことだ!

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