だりや荘

2年前に買って本棚の前の方に鎮座していた本。ようやく手にとって読み終えた。

読み始めればあっと言う間に2日で読み終わる。

井上荒野さん。文学伝習で、私の敬愛する井上光晴氏の長女。

やはり!氏の文学的才能を受け継いで作家デビューされた。

荒野さんがフェミナ賞を受賞された時から知ってはいたのだが、何故か氏への思い入れが強すぎて逆に手にとれなかった。
父、光晴氏との生活を書いた作品も、これからは読んでみたい。
まず、この作品は文章が、常に風通しのいい高原のような感じだ。実際「だりや荘」と言う名前のペンション(多分信州辺り?)が舞台の所為もあるのかな?

風通しの良い文章は、4人の登場人物それぞれの立場からのモノローグ的な語りで構成されている。突然の両親の交通事故。両親と姉の椿とで経営していたペンションを引き継ぐべく妹、杏と杏の夫と二人は東京の生活を引き払いペンションに越してくる。
椿は透明感を全身に漂わせた薄幸の美女、そのもので時々失語症の発作を起こす、独身でペンションの隣の建物に一人で住んでいる。

東京で指圧師をしていた夫と、明るくて可愛い杏夫婦には子供が出来ない。
迅人(杏の夫)と椿はかなり以前から”そういう関係”だ。それは杏も気づいているのだが、吹きすぎる風のように心に留めない。迅人にも椿にも嫉妬することもなく、責めることもしない。

アルバイトの翼という若い流れ者のような若者が杏と”そういう関係”になってペンション「だりや荘」は4人の男女の様々な愛が交差して物語は終盤を迎える。

が・・・エンディングは少し、ガッカリさせられてしまう。というか4人のそれぞれの行く末はそれぞれの中では結論を出し始めているものの何となくぼんやりして読者の判断にお任せで終わりを告げる。

避暑地での肉親の愛憎劇と言うと宮本 輝氏「避暑地の猫」などを思い出す。
私にとっては到底信じがたいことだが、迅人のように、同時に二人の女性を愛することが出来るのだろうか?
愛するというよりも”そういう関係”が続けられるのだろうか?

白樺林を抜ける爽やかな風のような作品だった。

だりや荘

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