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zoom RSS 【息子と狩猟に】

<<   作成日時 : 2018/06/10 11:38   >>

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「息子と狩猟に」 服部 文祥著 新潮社

服部文祥さんは登山家であり、作家であり、月刊の山岳雑誌『岳人』
の編集者として会社勤めもしています。1999年からは、捕って、
食べて、登る "サバイバル登山"という、自給自足の山旅スタイルを
確立。テントなし、時計なし、ライトなし、食料は米と調味料だけを
持って、シカを撃ち、イワナを釣って、道なき道を進み、山で
過ごします。驚くのは、会社員として働きながら、月に10日は
山に入り、ライフワークとしてサバイバル登山を実践していること。
書籍の営業をしながら、時々長めの休みをもらって山を登る。
そんな日々が2年ほど過ぎたある日、服部さんにビッグチャンスが
訪れます。エベレストに次ぐ世界第2位、中国とパキスタンに
広がる山「K2」(標高8,611m)へ日本山岳会青年部が実施する
遠征に、知人の紹介で運よく参加できることになりました。
そして、部隊は登頂に成功します。
「一般社会ではまったく知られていないと思うけど、山の世界でK2の
サミッター(登頂者)は、それだけで水戸黄門の印籠的な威力を
発揮する。それでかなり肩の荷が下りて、自分なりの登山を
ちゃんとやろう、と考えられるようになって。それまでは、
『一流の登山家になれば人に認めてもらえる。そのためには、
世界一のヒマラヤに登るしかない』そういう思い込みに
支配されていました」服部さんがK2の山頂に立ったのは、27歳になる直前のことでした。

「岳人」6月号を久し振りに購入しました。
特集の「パワースポット三十三山」が気になったので買ったのですが、
服部 文祥さんの連載エッセイ「今夜も焚き火をみつめながら」が掲載されていて
その38「その文学賞、是非私にください
そうです。
標題の「息子と狩猟に」は第31回三島由紀夫賞の候補作品になったのです。

最後まで受賞作品と票が割れたということです。(山本周五郎賞の選考過程と一緒です)
 
東京新聞書評より抜粋
[評者]池上冬樹=文芸評論家
登山家でノンフィクション作家の小説デビュー作だ。二篇収録されている。
 まず「息子と狩猟に」は、振り込め詐欺グループを率いる加藤と、山登りと狩猟が好きなサラリーマン倉内の話が並行して進む。加藤は金主に騙(だま)されて暴走し、倉内は息子と一緒に奥秩父で狩猟をする。二つの話は後半交錯して、命を狩ることの意味を突き詰めることになる。
 登山と狩猟の第一人者なので、知識と体験は豊富である。特に獣の解体の場面などは圧倒的迫力で、血の臭いが伝わってくるほど。ただ「新潮」に掲載されたわりには文体がやや甘く説明的で、主題把握よりもストーリー展開に重きを置いている。もっと長さの必要な物語だ。
 同時収録されている「K2」は、カラコルム山脈にある山・K2にアタックする登山小説で、生死をさまよう極限状況を描く。実質こちらが最初に書かれた小説で、余分な場面を省いて、命の連鎖を感得するまでを緻密に捉えていて悪くない。ただし会話も独白も、主題把握よりも物語の進行に寄与するきらいがある。
 掲載誌が「小説新潮」ではなく「新潮」なので、純文学の枠におさめようとしているけれど、おさまりきれない物語とドラマの片鱗(へんりん)がある。「小説新潮」でエンターテインメント作家の素質を開花させるべきなのではないか。骨太の物語作家として期待できる才能の煌(きらめ)きがある。


書評にある通り、まず振り込め詐欺グループの標的を落とす為の物語が出てくる。
すぐ次の章では倉内が二人いる息子の内、行きたがる小学4年の次男には「二人連れて行くのは俺が無理だ」
として今回は小学6年の長男に体験させるべく出発する。
15時に学校から帰った長男を待って車で山梨県甲州市まで行く。
山梨県と埼玉県の境をなす奥秩父山塊の南側が倉内が単独猟に使う猟場だ。
細かい注意事項を息子に教えながら、父と息子の息遣いが伝わる。
獲物を狩るのは面白い。そこにはたしかな興奮と喜びがある。準備を整え、じっと状況を積み重ね、
備え、そそいぇ訪れた遭遇の瞬間に、すべての感情を封鎖する。精神と肉体は装置となり、絞り込まれるように
連動して、破壊の一点に向かい集約する。殺生するとは相手を殺すことのようで、実は、自分という人間を
ひととき殺すことだ

内容はフィクションというより、ノンフィクションと言った方がよいほど、自身の体験に基づいた迫真に満ちる。
後半になると詐欺グループの中の金主とのトラブルから仲間を殺して、死体を山に運ぶ加藤。
加藤も実は倉内を同じく、狩猟の手ほどきを受けたことがあり、二人は山で接点を持つ。
サスペンス要素も多分にある。
でも、文章はあくまでヒシヒシとしていて服部 文祥さんの男と男。男と息子の関係が押さえ込まれた、
でも差し迫る勢いで淡々と語られる。
この手の小説は今まで、私には縁が無かった分野ですが、こんなにも面白いのかと思います。

昨今はジビエなどと言って一寸お洒落な雰囲気もありますが・・・

一昨年の元旦に三条の湯に泊まって、翌日に雲取山に登ったのですが、
その夜は宿泊者は私一人でした。
ラスト
子ジカに向かって先に歩き出したおつちゃんの背中に言った。
「これでおれも、いっしょだね」
「なにが?」
「ケモノに申し訳がたたないってやつ」
おとうちゃんが振り向いた。
「そういうことはな、ちゃんとやってから言うんだ」

この親子の会話はこの二日間で息子が父から受けた一番重い共有感覚なのです。
最近涙脆くなった私は、このラストには通勤バス車内でしたので、困りました。

今回の三島由紀夫賞候補を糧に次作が楽しみです。
「岳人」のエッセイも。
NHK「実践日本百名山」にゲスト出演(常念岳)しているAYUMIさん「家族と始めた山登り」としてエッセイを
載せています。モデルにしては健康的な様子で、笑顔が可愛い素敵な人です。
山登りの先生はご主人というので羨ましい環境です。
最後に服部 文祥さんの岳人のエッセイですが、角幡 唯介さんが「空白の五マイル」で
開高健ノンフィクション賞をとった時にこの作品が「岳人」に掲載されていて、その担当者が
服部さんだったので受賞式に出席したのですが、その時の大笑いするエピソードが
書かれています。それは、此処では書きません。内容に興味がある方は「岳人」6月号を読んで下さい。
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