のりこの山と本の記録

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zoom RSS 「眼と太陽」「世紀の発見」「終の住処」

<<   作成日時 : 2009/09/17 04:16   >>

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磯崎憲一郎「肝心の子供」で文藝賞を受賞した後の作品「眼と太陽」
まったく、予備知識なしに読み始める。

「日本に帰るまえに、どうにかしてアメリカの女と寝ておかなければならない。当時の私はそんなことを考えていた。そんなときに出会ってしまったのがトーリだった」
いきなり、こんな文章で始まる。少々度肝を抜かれながら読み進むが、ブロンドの髪のトーリー(子持ち女)の黒い腋毛を見たがために
「髪はブロンドなのに、確かにそれは黒い腋毛だった。そのときに私は、この女と結婚しなくてはならない、と知らされた。誰も知らないこの秘密を知ってしまったからには、おまえはこの女と共に暮らさなければならない、この女こそが定められた相手なのだ。過去のなかのある明確な一点に刻印されていた未来が、雲の切れ間の一筋の月光で照らし出されるように、それは唐突にやって来た」 と書かれていても、淫らな感じは受けない。

海外赴任で働いているサラリーマンが出てくるところは、本人の体験が土台になっているのかな?と思わせられる。芥川賞候補作だったそうだが、これで、受賞されなくてよかったような気がする。


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「世紀の発見」
「いまではまったく信じがたい話だが、私たちはついこのあいだまで花は花屋で、肉は肉屋で、服は仕立屋で買う世界に住んでいた。彼の家も仕立屋だった。あるとき、彼は機関車を見た」

「肝心の子供」「眼と太陽」に続く三作目だが、又、又、異質な現実を超えた「現実」を展開して見せてくれている。
体験し得る「現実」が織り込まれた牛乳パックのようなものだとしたら、磯崎憲一郎はそれを切り開き=リサイクルに出す時のように、展開してみせると、その内側には実はアッと驚く世界が隠されていたのだ。そんな言葉で言うしかない「機関車を見た」という男の「現実」
シャツの仕立屋の父という設定はなかなか良い!
昔、そんなドラマがあったような気がする。鶴田浩二主演「シャツの店」良いドラマだった。鶴田浩二と八千草薫の夫婦のやり取りが良かった。そんな旧いドラマをふと思い出した。
ナイジェリアに11年赴任するサラリーマンが、又出てくる。


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ようやく読み進み「終の住処」に。
実は読む順番は「肝心の子供」の次に「終の住処」を読んだのだった。
もし、本作品で、芥川賞を受賞逃していたら、磯崎憲一郎を知らずに、この本はじめ一連の三作も読まなかっただろうけど、けれど、十分の賞には値する内容だと思える。
久々の40代、現役商社マン(三井物産勤務)、容姿もスレンダーでマイルドで見た目も良し。
そんな話題性もあって、発売以来、売上部数を伸ばしている。
絲山秋子、津村記久子と働く女性の小説は、好きなのだが、この2人の「働く場」は、余りにも現実に根ざしていて、「そうだ、そうだ」と頷くことは多いけれど、それだけで、終始してしまうよう。

「彼も、妻も、結婚したときには三十歳を過ぎていた。一年まえに付き合い始めた時点ですでにふたりには、上目遣いになるとできる額のしわと生え際の白髪が目立ち、疲れたような、あきらめたような表情が見られたが、それはそれぞれ別々の、二十代の長く続いた恋愛に破れたあとで、こんな歳から付き合い始めるということは、もう半ば結婚を意識せざるを得ない、という理由からでもあった」
年齢からくる諦念だけで結婚した2人、終始不機嫌な妻。
遊園地に行き、観覧者に乗ってきた翌日から、妻は口を聞かなくなる、11年も。
34〜35頁に、
「向かい側からひとりの女が歩いてきた。頑なに前だけを見て彼と視線を合わせることもなかったが、擦れ違うまさにその瞬間、スカートの裾が彼の右手の中指の爪に、嘘のように微かに、触れた。」
その、瞬間で、外見ではそれと分かり難いが、実は女が太っていることを知る。
「問題はその秘密を知ったことによって、女と付き合うことはもはや避けがたい義務であるかのように彼には感じられた」

これは黒い腋毛に秘密を知った男が結婚せねばならないと決心する「眼と太陽」に類似している。
男は、いえ、女も、一目あった瞬間に「この女(男)と自分は性的関係を持つ」と確信するものがあるのかもしれない、と、私は思う。なので、磯崎氏の、そうした、書き方は非常に、納得が出来る。
私の友人(女)は、この小説は理解出来ない。投げ出したいくらいだ、と語りました。
不機嫌な妻とは11年も口を聞かず、自分がアメリカに赴任している時に、娘もアメリカに住んでいたことすら知らず、次々に不倫を遍歴する男の話なのですから。
筋書きだけを表現するのは、この小説を理解することの助けにはならない。
「文藝春秋」の選評を読むと、辛口批判も見受けられるが、新人賞なのだから、将来が期待できるかどうかにも掛ってくるのであろうか。

本の帯には「とうてい重要とは思えないようなもの、無いなら無いにこしたことはないものたちによって、かろうじて人生は存続しているのだった。それらいっさいが、懐かしかった」
確かに次作は楽しみです。



眼と太陽
河出書房新社
磯崎 憲一郎

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